昔、東京銀座にロイヤルコペンという名前のレストランがあった。
店の名物は、カマンベールチーズのフライだ。新聞雑誌で紹介され、今で言うセレブの御用達のお店だ。
勿論食べに行って来た。
デンマーク農業出荷委員会の日比谷の事務所を訪れていたのでデンマークのインテリアに興味をもっていた。
事務所の照明器具は紙でできているが斬新なデザインだ。パーティションの色彩は、黒でアクセントに真っ赤な赤いラインで彩られていた。
ロイヤルコペンは全体に明るいイメージでインテリアはやはり洗練されたデザインで統一されていた。
メインはカマンベールのフライだ。
大きなお皿が運ばれた。独特な藍の縁取りがされているデンマークのロイヤルコペンの磁器の皿に真っ赤なソースがひかれている。
その真ん中にカマンベールのフライが盛られている。周りのテーブルを見ると年配の奥様方は器用にナイフとフォークでカマンベールのフライを切っては赤色のソースにからめて食べている。
ソースはストロベリーソースだった。揚げたてのカマンベールはトローリとして白カビの香りが一瞬広がる。
ストロベーリーのソースがカビの匂いをやさしく包んで甘味が広がる。
今までにない新しい組み合わせの食べ方に驚嘆した。
コーヒーもロイヤルコペンのカップだ。ヨーロピアンコーヒーを楽しむ。
その日の客で男は一人だけだった。女性たちのグループで席は埋まっていた。
それから30年ロイヤルコペンの店はもう無いが、カマンベールのフライは居酒屋のメニューで健在だ。
知り合いの奥さんの手料理で天ぷらが出てきた。
揚げ色も上品である。細長く小ぶりな天ぷらでよく見るとえのき茸だ。
黄色みを帯びた可愛い傘の白いキノコの天ぷらと分かった。
抹茶の塩で食べてくださいとのこと。ちょっとつけて口にすると淡白なえのき茸がコクのある天ぷらになっている。衣も味わいも格別においしい。
聞くと溶いた天ぷら粉にえのき茸とシュレッドチーズを入れて一口サイズに取り分けてさっと揚げるのだと聞いた。
揚げたてが次々に出てくるのでチーズの衣はカラッとしていて歯ざわりも快い。
抹茶塩とえのき茸の天ぷらを食べながら、ふとロイヤルコペンのカマンベールのフライを思い出していた。
長野の駅前周辺は居酒屋がはやっている。えのき茸とシュレッドチーズを衣で包んだ天ぷらは、酒の肴によく合うし、価格も安く提供できる。
メニューに載せてくれるお店は無いものか。




コメントする